中小企業基盤整備機構について

ここでは、中小企業基盤整備機構とのやり取り、文章での回答内容などについて説明しています。

重複案件ルール(二重受給ルール)に対する機構の回答

さて、この特設ページで取り上げている重複案件ルール(二重受給ルール)問題ですが、不適切審査(事務局がルールに則った適切な審査をしなかったがために、事業者に意図しな不正受給が多数発生している)を指摘する旨の内容証明を機構の理事長宛てに送っていたところ、機構のコンプライアンス統括室から正式回答がありました。

今日はそれを紹介しながら、解説していこうと思います。


その前に前提条件の確認です。

まず重複案件ルールとは下記のようなものでした。

第1回~第7回公募要領
テーマや事業内容から判断し、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する 他の制度(補助金、委託費、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業


第8回~第10回公募要領
テーマや事業内容から判断し、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する 他の制度(補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格 買取制度等)と同一又は類似内容の事業


上記の第8回ではじめて、「~公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬~」という文言が追加されました。

私の調査では第1回~第7回までには、私の調査では各回平均100者(第1回~第7回まで合計1,000者)を超える医療、介護、障がい福祉などの事業(重複案件ルール該当案件=公募要領違反)が採択されていると考えています。

この採択の審査に問題はなかったのでしょうか?

もうひとつルールの確認をしておきます。

「~公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬~」という文言が第8回の公募要領で追加されましたが、第7回までは公募要領にこの文言はありませんでした。

では、第1回から第7回までの採択者については、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受ける事業を補助事業とすることが認められていた(問題がない)のでしょうか?

第7回までは公募要領に明記されていなかったのだから、補助事業とすることは認められているのでは?と考える方もいるでしょう。


そこで、2024年6月14日に中小企業庁に問い合わせたところ、6月28日に以下の回答がありました。

「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」の文言に関しましては、趣旨明確化として追記されたものになります

「趣旨明確化として追記」と回答に書かれています。

わかりやすく言えば、中小企業庁としては、「第8回から公募要領に明記はしたが、そもそも第1回から公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受ける事業を補助事業とすることが認めておらず、それをきちんと第8回の公募要領に記載しただけ」ということです。

これについては、私がこの問題に疑問を持った2023年1月に中小企業庁の事業再構築補助金の担当者(技術経営革新課I氏)にメールを送り確認していますが、同様の趣旨の回答がメールでありましたので、中小企業庁のスタンスは2023年1月から今まである意味、変化はありません。

よって、繰り返しになりますが、

重複案件ルールとしては、第1回から公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受ける事業を補助事業とすることを認めておらず、これに該当する場合、交付取消、補助金を受給していた場合は補助金返還の対象となります。

あわせて、事業再構築補助金事務局にも確認を行っていますが、事務局からも中小企業庁と同様の回答がありました。

また、中小企業基盤整備機構イノベーション助成グループの複数の職員にも同様の質問をしましたが、こちらも同様に、趣旨の明確化であり、第1回から公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受ける事業を補助事業とすることが認められないとの回答をいただいています。


ということで、事業再構築補助金事務局、これを監督する中小企業基盤整備機構、さらに所管官庁である中小企業庁の3者すべてが、
事業再構築補助金は、第1回から「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受ける事業を補助事業とすることが認められない」との認識で一致しています。


この前提で、問題を見ていきます。


ルールの確認ができたところで、中小企業基盤整備機構からの回答をお見せします。


まずこの画像をご覧ください。

中小企業基盤整備機構理事長宛ての質問状に対して、機構のコンプライアンス統括室名義での回答となっています。
そして、この回答(書面)は、電話でコンプライアンス統括室の担当者に確認しましたが、理事長等にも報告、確認のうえ発出されているとのことです。

そして回答内容がこの画像です。

なお、私からの機構側に対する質問、指摘は以下の通りです。
・第1回から第7回までの採択者(約58,000者)の中に、1,000者を超える医療、介護、障がい福祉等の重複受給ルールに該当するであろう事案がある(該当者リスト及び一部事業者についてはエビデンスを提供)。
・1者、2者ではなく、1000者を超えるとなると、認定支援機関の関与も必要であることから、事業者が不正の意図をもって行った結果ではなく、事業再構築補助金事務局の審査体制自体に不備(不適切審査)があったがために、本件が発生したと考えるのが妥当。
・また、事業再構築補助金で「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受ける事業を補助事業とすることが認められない」旨は第7回まで公募要領に明記されておらず、毎回採択結果が公表されている中で、第1回から数多くの医療や介護、障がい福祉系事業が採択されている。この状況を踏まえれば、各事業者及び認定支援機関が、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受ける事業を補助事業とすることに問題ないと考えることに落ち度はない。
・よって事業再構築補助金事務局の不適切審査の結果、多数の公募要領(重複案件ルール)違反が発生していると考えられ、意図しない不正受給となっている事業者の救済措置が必要である。
・そのうえで、不適切審査の実態について、事業再構築補助金事務局を監督する機構として、適切に調査願いたい。


機構の回答内容は以下の通りです。
「当機構は事業再構築補助金の受給に関し適正に審査等が行われていると認識しており、貴殿が指摘する案件の調査、公表は予定しておりません。」


これを見てどう思うでしょうか?

1,000者を超える医療、介護、障がい福祉系の補助事業採択者リストや一部事業者にはさらなる追加エビデンスを受け取りながら、調査を行うつもりはない、完全に無視するという話ですよね。


本来、コンプライアンス統括室は、不正の端緒を発見した場合、徹底的に調査をするのが仕事なはずです。実名での告発、1,000者を超えるリストや追加のエビデンス、さらに理事長宛てに内容証明を受け取っていながら、私の指摘がまったくの的外れ、調査に値しないというように結論付けたということになります。

しかし、医療、介護等を補助事業とした事業者様には朗報かもしれません。

事実上、機構のコンプライアンス統括室が、過去採択されている事業者(特に計画書の審査、交付審査、実績報告審査等、複数の審査を経て補助金を受給している事業者)については、適正に審査が行われている=公募要領違反や不正はないということを保証すると言ってくれているのと同義です。

もし、重複案件ルールの問題でお悩みの事業者様(実名でお話しできる方限定)がいらっしゃいましたら、機構からの回答書を共有しますし、ご相談にも乗らせていただきます。



それでは最後に、私が不適切審査があると考えた根拠などを挙げてこの記事を終わろうと思います。
(ここから、かなり長いですが…)

まず、1,000者を超える採択者が重複案件ルールに該当するというのは本当か気になりますよね。この問題の大前提です。

まず、こちらをご覧ください。

事業再構築補助金事務局の採択結果が記載されています。
私が問題を指摘している第1回~第7回の結果はなぜか既にリンクが消され見れなくなっています。

これでは、過去(第1回~第7回)の採択者の情報が見れないと思いますよね。
それが見れるんですよ。

国立国会図書館インターネット資料収集保存事業 (ndl.go.jp)
こちらの国立国会図書館インターネット資料収集保存事業を活用すると、事業再構築補助金の過去の資料を見ることができます。
「事業再構築補助金」と入れてみると、例えば下記のリンクがでてきます。

https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12364968/jigyou-saikouchiku.go.jp/result.php
ここで第6回までの採択者情報が見れますね。

では、第1回の緊急事態宣言特別枠を見てみましょう。

例えば、障がい者向けのグループホームを検索するために、Ctrl+Fで検索窓を開いて、「グループホーム」と入れてみましょう。数件ヒットしますね。
そのほかにも「訪問看護」「調剤」「介護」「放課後等デイサービス」「就労支援」などのキーワードで検索すると、すべてが重複案件ルールに当てはまるわけではないですが、中には明らかに国費が入っているであろう事業が出てくるわけです。

私も調査のうえ、一覧にし、1,000者を超えるリストを中小企業基盤整備機構に渡していますが、当然ながら、機構(と事務局)はすべての申請書データを持っているわけですから、採択者の中に多数の重複案件ルールに該当するものが入っていることは、私が指摘するまでもなく、当然に理解しているはずです。

であるにも関わらず、機構のコンプライアンス統括室は、そんな案件は存在しないし、1,000者もの採択案件が重複案件ルールに該当するなんてことはない。ないんだから、調査もしないと強弁するわけです。

私からすると理解に苦しみます。コンプライアンス統括室まで一緒になって、事実を隠蔽するの?と感じます。

さて、では現時点で指摘を受けていない重複案件ルールに該当する事業者は安全なのか、つまり補助金返還を求められることはないのかについて解説します。

もう一度説明しますが、本補助事業に係るすべてのデータを持っているのは事業再構築補助金事務局と機構そして間接的かもしれませんがデータにアクセス可能と言う意味では中小企業庁です。

そして、彼らはすべて知っています。
私が調査したように、明らかに重複案件ルールに該当する採択案件、補助金受給者がいることを。


もう少しお付き合いください。

少し遡って2022年10月、事業再構築補助金の第8回公募要領が発表され「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬を受ける事業を補助事業とすることが認められない」ルールが明記された同時期のことです。

同じく中小企業庁が所管する「ものづくり補助金」の第13次公募要領も公表されています。
そして、事業再構築補助金同様に、下記の文言が加わりました。

・(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する制度との重複を含む事業。すな
わち、テーマや事業内容から判断し、本事業を含む補助金、委託費と同一又は類似内容の事
業(交付決定を受けていない過去の申請を除く)、及び公的医療保険・介護保険からの診療報
酬・介護報酬、固定価格買取制度等との重複がある事業。

ちなみに同じ部分の第12次公募要領の記載は下記の通りです。

・テーマや事業内容から判断し、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する
制度(本事業を含む補助金、委託費等)と同一又は類似内容の事業(交付決定を受けていな
い過去の申請を除く)。

事業再構築補助金とほぼ同じ書きぶりですね。
ここで補助金のルールが大きく変わったというのが事実です。

こちらの採択結果の中身を見ていただければわかりますし、ものづくり補助金の支援を行っていた専門家なら当然ですが、過去より、ものづくり補助金では、歯科医(デンタルクリニック)が多数採択されています。

もちろん歯医者ですから、一部の審美歯科専門の歯科医を除けば、公的医療保険による収入があると考えるのが普通で、ものづくり補助金事務局も中小企業庁もそれを理解しながら、許容する運用を行ってきました。
これは事実です。

ものづくり補助金のコールセンターに、第13次公募要領に明記された「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」を受ける事業を補助対象にしない運用は、過去(ものづくり補助金第1回~12回)に遡及適用されるのか確認しましたが、答えは「遡及適用しない。公募要領に明記された第13回から適用される」という回答です。

これを確認して、あることを私は確信しました。


事業再構築補助金も2022年10月の時点で、ものづくり補助金と同じように、公募要領に明記された第8回公募から「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」を受ける事業を補助対象にしない運用を行うこともできたはずです。ものづくり補助金がそのように行っているのですから…。

でも、それをしなかったのはなぜか?
あえて、トラブルを生むとしても、ものづくり補助金と異なる対応(私から見れば遡及適用、機構等からすればルールの明確化)を選択したのはなぜか?

私が考える答えは、事業再構築補助金事務局、中小機構、中小企業庁としては、「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等」を受ける事業を補助事業とする事業者に補助金を返還させるためです。
(背景には民営の障害福祉施設等が爆増したことで厚労省と経産省・中企庁とのバトルがあったのかもしれません、事業者はいい迷惑ですが…)

繰り返しますが、事務局も中小機構も中小企業庁も、採択者の中に多くの「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等」を受ける事業を補助事業とする事業者がいることは当然知っています。

ただ、すぐに1,000者もの事業者に補助金返還を求めると、大きな混乱が生じ、事務局等の責任問題になりかねない。
だから、私の指摘も含め、ここは静かにしておいて、ほとぼりが冷めた数年後に、1社1社個別に調査を行い、公募要領違反を指摘し、補助金を返還させる、そのように私は考えています。

もし、そのようなことを行う気がないのであれば、ものづくり補助金同様、第8回公募から「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等」を受ける事業を補助事業とすることを認めないルールにすればよかっただけの話です。

第1回~第7回まで、ものづくり補助金以上に「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等」を受ける事業を補助事業とする案件を採択しておいて、ここで第1回からそれが公募要領違反になるルールを遡及適用すれば、何が起こるか?
起こることを理解したうえでやったと思っていますが、もしかすると、とても恐ろしいことですが、事務局や機構、中小企業庁に、どのようなことが起こるかという想像力が欠如していたのかもしれません。



さて、でもそもそもなんで、1,000者もの「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等」を受ける事業を補助事業とする採択が採択されたのか?

事務局等は、
・重複案件ルールは第1回審査時点から存在していた。
・事務局等は事業再構築補助金運営開始当初から、「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等」を受ける事業を補助事業とすることを認めていない。
・であるため、第8回公募要領への追記は、ルールを遡及適用したものではなく、あくまでもルールの明確化だ。
というように説明しています。

本当でしょうか?
私は嘘だと考えます。

おっと、こういうと、機構から最初からルールがなかった証拠を出せ!と文句が飛んでくるかもしれませんね。では、少し言い換えておきましょう。

少なくとも、大多数の事業者、認定支援機関等の支援者、そして事業再構築補助金事務局や機構、中小企業庁の事業再構築補助金担当者においても、2022年10月時点(公募要領に明記される手前)まで、重複案件ルールが、医療や介護などの補助事業を補助対象としないことを指すという認識がなかった、という言い方ならどうでしょう。

なんでそんなことが言えるのかというと…

・医療や介護等を補助事業としてはいけないルールを最初から認識しており、適正に審査していたのであれば、1,000者を超える医療、介護、障がい福祉等の事業が採択されている理由を説明できない。ルールが徹底されておらず、見逃したのであればまだ救いようがあるが、ルールを認識していながらこれだけ多くの数を見逃すのは、重大な審査体制の不備(不適切審査)としかいいようがない。

だからね、事業再構築補助金の審査員も第7回までは、ルールを認識していなかった(そもそもルールなんて存在しなかった)んですよ。

いくら急遽集められた中小企業診断士の審査員といっても、
・補助対象事業が「調剤薬局」であれば、公的医療保険(診療報酬)の対象だって気づくはずでしょ?
 病院に行った後、薬局に行って、全額(100%、10割)自己負担だったことありますか?
・「障がい者グループホーム」や「放課後等デイサービス」だって、公的医療保険、介護保険ではないけれど、制度として国庫負担がないと成り立たない事業なのは、当然に理解しているでしょう。

そんな事業が多数申請され、採択されているということは、申請した事業者、それを支援した金融機関や商工会議所などを含む認定支援機関、そして審査員ですら、重複案件ルールを理解していなかった証拠です。


もう一つ付け加えるとすれば、中小企業庁が出している「事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック」を見れば、もっと事態は明らかになります。

この画像をご覧ください。
こちらは、2022年10月に公表された事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブックのページです。

そして、こちらの画像と比較してみてください。
こちらは、2023年2月に修正された事業再構築補助金の事業計画書作成ガイドブックのページです。

違いがお判りになりますか?

2022年10月の表と比べ、2023年2月の表は明らかにスカスカですね。そう、中小企業庁によって、たった4ヶ月(2022年10月~2023年2月)の間に、何かが意図的に消されているのです。

何が消えてるか…順番に行きます。
・就労・障害者支援事業(有望度「高」)
・グループホーム事業(有望度「中」)
・運動指導・療法(有望度「中」)
・保育関連事業(有望度「中」)
・老人ホーム関連事業(有望度「中」)
・放課後等デイサービス事業 (有望度「中」)
・歯科技術の展開  (有望度「低」)
・リハビリ関連事業  (有望度「低」)
・オンライン技術の活用  (有望度「低」)
・介護等高齢化対応サービス  (有望度「低」)

この消された事業は、「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等」を受ける事業という理解でいいと思います。
全てとはいいませんが、障害福祉関連、介護関連、歯科等の医療関連と保育事業です。

2022年10月時点で中小企業庁が自信をもって公開したガイドブックでしたが、そもそも公募要領違反になるとされていたはずの事業が採択されていることをしっかりと記載しておきながら、外部からの指摘で、それがわかると、サラッと何事もなかったように、ガイドブックから削除しています。

当然、なぜ削除されたか、説明もありません。

このように、このガイドブックを取りまとめた中小企業庁でさえ、採択されてはいけない公募要領違反の補助事業が多数採択されていることについて、2022年10月の直前(ガイドブックの取りまとめ作業中)まで、認識していませんでした。

もし、誰か一人でも、ガイドブックの作成に携わった中小企業庁の職員が、「あれ?介護事業とか障がい福祉系の事業が多数採択されているけど、おかしくない?重複案件ルールに該当するよね?」と声を上げていれば、このような資料が世に出ることはありませんでした。
そう、誰も介護や障がい福祉系の事業が公募要領に違反するなんて、この時点では気づいていなかったのです。


これで、重複案件ルールという項目は当初からあったものの、公的医療保険や介護保険からの診療報酬、介護報酬を受ける事業等が補助事業として認められないルールが当初はなかった、もしくは誰にも認識されていなかったということが理解いただけたでしょうか?

最後に、中小機構が全国本部を担っている「よろず支援拠点」とういものがあります。この制度自体はとても良い制度だとは思いますが、この支援事例を載せちゃって大丈夫?と思った事例があったので、ご紹介して終わりにします。

ただし、最終的に公募要領違反を判断するのは、事務局、機構、中小企業庁、経済産業省です。
これから説明する事例の事業者が公募要領違反であるということを断言しているわけではないことをご注意願います。
また仮に補助事業が重複案件ルールに該当する場合でも、本記事の最初に説明をしているように、事業者が意図的に行ったものではなく、ルール不在及び事務局の不適切審査に起因するものだと考えており、かつよろず支援拠点の担当者がしっかりサポートしたうえでのことですので、事業者の責任はないに等しい。これは、よろず支援拠点のコーディネーターですら、ルールを適切に理解していないのでは?という闇について説明するために取り上げるものです。趣旨をご理解ください。

それでは事例を見ていきます。

事例は、令和4年度よろず支援拠点成果事例集の中にあります。
こちらの画像をご覧ください。

この事例は既存事業が銭湯の事業者が、銭湯に隣接する遊休資産(建物)を改修し、通所型介護事業所の運営に乗り出すことを、よろず支援拠点が支援をした事例です。

一般的な事例であれば何の問題もありません。
しかし、この事例、よく見ると、

「~自己資金の留保がないため、遊休資産の建物を利用した介護事業に進出するには、外部からの資金調達が必要な状況だった。そこで、事業再構築補助金を活用し、業種転換で申請を進めることとした。」
と書かれています。

「COはまず、介護事業所の開設に必要な県・市への申請支援を行った。そして、介護事業所として利用するための遊休資産の改築に必要な資金を事業再構築補助金で補うべく、申請についての情報提供と計画書作成の支援を行なった。」

COとはよろず支援拠点のコーディネーター(支援者)のことを指していると思いますが、明確に事業再構築補助金で介護事業を行う、介護事業に使う遊休資産(建物)の改築に必要な資金を事業再構築補助金で賄うと書かれていますね。

ここまで読んでいただいた方は思うはずです。
あれ?それって、重複案件ルールが禁じている、介護保険からの介護報酬を受ける事業を補助対象にすることに違反していない?と。

あえて事業者のHPサイトは載せませんが、そちらにも介護保険の適用があると思われる記載があるように私には見受けられます。

少なくとも、介護報酬を受ける補助事業が重複案件ルールで禁じられている状況下、誰でも見られるサイトに、事業者の誤申請(重複案件ルールに該当するような事業再構築補助金の申請)を誘発させるような文章や支援内容を載せるべきではないと思います。

実はこの事例、全国の支援事例のところに掲載されていましたが、問題ではないかと中小機構に指摘したところ、指摘したページからは削除されています。理由はわかりません。

しかし、事例集にはまだ掲載されていましたので、機構が本部をつとめるよろず支援拠点のコーディネーターですら、このような紛らわしい表現(本当に事業再構築補助金で介護事業所を整備し、介護保険から介護報酬を受けていれば重複案件ルールに該当する可能性が極めて高い)をしてしまうという事例として挙げさせていただきました。

最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。

Coming soon…

Coming soon…