二重受給ルール問題の本質

なぜ、本サイトで二重受給ルール(重複案件ルール)を取り上げているのか、その目的、背景や問題点等をご説明していきます。

本サイトで取り上げている二重受給ルール問題とは

まず、二重受給ルール(重複案件ルール)のおさらいです。

以下は、各公募回の公募要領からの抜粋です。


第1回~第7回公募要領
テーマや事業内容から判断し、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する 他の制度(補助金、委託費、固定価格買取制度等)と同一又は類似内容の事業

第8回~第10回公募要領
テーマや事業内容から判断し、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が助成する 他の制度(補助金、委託費、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格 買取制度等)と同一又は類似内容の事業

ここではじめて、「~公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬~」という文言が追加されました。

第11回公募要領
文言自体は第8回と変わりありませんが、項目名が「重複案件」から「国庫及び公的制度からの二重受給」へ変更されました。

重要なのは、第8回の変更になります。

「~公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬~」の文言があることで、以下の変更が生じました。

具体的には、以下の事業分野は事業再構築補助金の補助対象事業としては認められなくなりました
(後でも説明しますが、正確に言えば、事務局や機構、中企庁は第1回から認めていないスタンスです)
・医療分野(訪問看護、訪問歯科、調剤薬局、保険診療も扱う接骨院や鍼灸院等)
・介護分野(通所や訪問介護など居宅サービス、特養や老健の施設サービス、各種地域密着型サービス等)
・障がい福祉分野(就労支援、放課後等デイサービス、障がい者グループホーム等)
・保育分野(保育園、学童保育等)
※いずれも、費用全額が利用者の自己負担となる(=国費が投入されていない)事業を除く

この第8回の変更について、事務局、機構、中企庁は、公募要領に明記はしていなかったが、第1回から補助の対象外であることには変わりはないとのスタンスです。

第1回から第7回で採択され、上記の分野を補助事業とする事業者におかれましては、いつ事務局から交付決定を取り消され、補助金全額に加算金も加えた額を一括返還するよう求められても、文句が言えない状況であるとご理解いただくと良いと思います。

第8回の公募要領が公開されたのが、2022年11月頃だったでしょうか?

この変更に気づき、コールセンターへ以下の質問を行っています。
Q.二重受給ルール(当時は重複案件ルール)の文言が変わりましたが、この変更は第何回の採択者から適用になりますか?

回答が二転三転し、1ヶ月以上、待たされたうえ最終的な結論は、
A.第1回から適用されています。あくまでも公募要領に「明記」しただけで、第1回からルールは変わっていません。

でも、過去に医療や介護、障がい福祉等の分野、つまりなんらかの形で国費が投入されている分野の事業が数多く採択されていますが…?との問いについては、
A.過去もきちんと審査しておりますので、重複案件ルールに該当するような事業は採択されていません。これ以上、お話することはございません。

とのことで、取り付く島がありませんでした。

以上、まずは、二重受給ルール(重複案件ルール)について、ご説明しました。

私が調査したところ、第1回~第7回の採択者の中で、上記の4分野に該当する採択件数は1162者。
すべてが補助金の受給を受けているかは事務局の内部にいるわけではありませんので確実な情報はないですが、公表されている事業者名や事業計画概要から検索をかければ、その多くが、事業計画概要に記載された事業を行っていることは確認しています。

次回は、なぜこのサイトを立ち上げたのか?
二重受給ルール(重複案件ルール)による公募要領違反で、補助金を受け取ってしまうと、形式上はニュースで報道されている持続化給付金や雇用調整助成金などの不正受給と同じ扱いになってしまいます。

しかし、そもそも、なぜ多数の事業者が二重受給ルール(重複案件ルール)に該当し、公募要領違反(不正受給)が発生することになったのか?

私は故意に二重受給ルールに該当することを隠して、もっと平たく言えば、確認書を発行した認定支援機関や事務局を騙して、補助金を受けた事業者はほぼいないと考えています。

次回はその原因について説明していきます。

二重受給ルール該当先が多数発生した原因は?①

まず、誤解がないように書いておきますが、この「二重受給ルール」自体が間違っているとまでは主張するつもりはありません。

ただ、「二重受給ルール」について、思うところは当然あります。

例えば、介護や医療などのサービスの提供対価に見合った報酬(介護報酬、診療報酬)を事業者は受け取っているわけで、公的医療制度や介護保険制度で、補助を受けているのは、事業者というよりも、サービスの利用者(患者)です。

例を挙げると、
30円(保険の患者負担3割前提)相当のサービスを提供していて、国がさらに事業者の利益のために70円を追加支払しているわけではなく、
100円のサービスを提供しているが、全額を利用者(患者)負担とすると、様々な問題が起こるので、
仕組み上、利用者(患者)が30円を払い、残りの対価である70円を国(ただしその財源は保険料と税金であり、結局は国民負担)が保険制度の仕組みを使い、国民から徴収したうえで、支払いを行っているにすぎません。

ひとつの対象経費について、Aという補助金とBという補助金を二重に受け取るのは当然問題です。
しかし、今回取り上げる二重受給ルールについては、それとは趣を異にすると思います。

が、それを議論しだすと、答えが出ませんし、介護や医療分野に向けた補助金もあるので、二重受給ルールについては、これは一つのルールとして認める前提でお話します。

話を戻します。

ひとつ上の記事で、「二重受給ルール」がどのようなものか、「二重受給ルール」により、事業再構築補助金で採択された第1回~第7回の事業者のうち、医療、介護、障がい福祉、保育などの分野を補助事業とすることは認められず、形式上、多くの不正受給が発生している可能性が極めて高い旨、ご説明しました。

では、なぜそのような事態が起こるのでしょうか?

不正受給が起こるまでのプロセスは以下の通りです。
①ルールに反する(介護や障がい福祉等の事業を補助事業とする)申請(不正の意図の有無によらず)を行うことを事業者が決定。
②事業者が支援者(認定支援機関)とともに、申請書類を作成。
③支援者(認定支援機関)が確認書を発行。
④事業者が申請を実施(計画書等の申請資料をjGrantsで事務局へ提出)。
⑤事務局から委託を受けた審査員(中小企業診断士等)複数名が計画書をチェック、採点。
⑥審査員の採点結果を元に、事務局が対象外要件への該当をチェックし、採択事業者を決定。
⑦採択事業者が交付申請手続きを実施(見積書等を事務局に提出)。
⑧交付申請書類について事務局の審査員が審査し交付決定。
⑨採択事業者が交付決定を元に投資を行い、実績報告手続きを実施。
⑩実績報告書類について、事務局の審査員が審査し、補助金額を確定、補助金を支給。

この後説明しますが、この⑩のステップのどこかで、誰かが、ルールに反していることに気づけば、不正受給は起こりません。

まず、「①ルールに反する(介護や障がい福祉等の事業を補助事業とする)申請を行うことを事業者が決定」というところを見ていきましょう。

不正受給のスタートはここになります。

事業者が不正受給の要件に該当する申請を行わなければ、不正受給は起こりえません。

そこで、まず問題となるのは、事業者が不正の意図を持っていたか否か。
不正の意図を持っていた、不正の意図を持っていなかったのではだいぶ状況は異なります。

そして、今回の二重受給ルール問題について具体的に言えば、補助事業がルールに反するであろうこと(医療、介護、障がい福祉、保育などの分野を補助事業とする申請が二重受給ルールに該当すること)を事業者が申請時点で認識していたかということです。

今回の二重受給ルール問題の大きな原因の一つがこの点です。
それでは、事業者が介護や障がい福祉等の事業が二重受給ルールに該当し、補助対象とならないことを認識していたか(認識できていたか)?または認識していなかったと、それについて落ち度はないか?についてみていきたいと思います。

前回の記事にも書きましたが、第7回までの公募要領には、二重受給ルール(重複案件ルール)の記載はあります。ただし「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」という文言は入っていませんでした。それらを含め、

私の意見としては、
・申請をされたほぼすべての事業者は、介護や障がい福祉等の事業が二重受給ルールに該当するとは知らなかった(当初から不正の意図はなく、二重受給ルールについて認識していなかった)。
・また、認識できなかったことについて、落ち度はない。
というのが結論です。

(一部の支援者の中には、医療や介護の事業に使って本当に大丈夫か疑義を持っていた方がいらっしゃるのは私も承知していますが、大きな声にはならなかったのは事実でしょう。)

●事業者が不正の意図を持っていなかったとする理由
・事業再構築補助金は不正受給で逮捕者もでている持続化給付金等と異なり、すぐにお金(キャッシュ)がもらえるような(もらってそれで終わりの)制度ではない。
・相応のレベルの事業計画書の作成が必要。
・補助金をもらうまでのプロセスが長く、複雑。
・あくまでも投資を行った各種エビデンス(見積書、領収書等)に応じて、投資額の一部の額を後から受け取るため、補助金を受け取る前に、相応の資金を必要とする。
・認定支援機関の関与が必須のため、事業内容に疑義(ルール違反)があると、計画書を作成できたとしても、確認書の発行が受けられず、申請ができない。
などです。
そもそもの仕組みとして、事業再構築補助金は、持続化給付金と比べ、簡単には不正受給ができない(ハードルが高すぎて不正の誘因が小さい)仕組みになっているので、これだけ多くの事業者に不正受給の意図があったとは考えられません。

●次に事業者が二重受給ルールへの該当を認識できなかった理由
・繰り返しの指摘になりますが、第1回(2021年3月)~第7回(2022年7月)の公募要領には「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」という文言が記載されていないことに尽きます。当初から公募要領に「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」の文言があれば、多くの事業者や、少なくとも、認定支援機関は認識することができ、不正受給はほぼ起こらなかったでしょう。

●最後に、事業者にに落ち度がないとする根拠ですが、
・同じく経済産業省(中企庁)が所管するものづくり補助金12次公募(2022年8月)までは、事業再構築補助金と同様の重複案件ルール(二重受給ルール)の記載があるが、ものづくり補助金では、公的医療保険等から給付を受ける事業(歯科医院など)で使用する場合でも、補助対象とすることが認められていた(ものづくり補助金コールセンター確認済、録音あり)。よって、事業再構築補助金もものづくり補助金と同様に、介護や障がい福祉等の事業が対象になると考えることに違和感はない。
・事業者より圧倒的に補助金のルールに詳しいはずのメガバンク、地銀、信金信組などほぼすべての金融機関、商工会議所や経営を支援する公益財団法人までが、事業者同様に、重複案件ルール(二重受給ルール)で介護や障がい福祉等の事業が認められていないことを認識していなかった。これは1162者の不正受給懸念先の認定支援機関に、当該機関が入っていることで裏付けられています。さすがに事業再構築補助金事務局といえども、メガバンクや各地の商工会議所が事業者と協力して、ルール違反を知ったうえで、事務局を騙したとは言えないでしょう。
・そして、これは第2回以降の申請者になりますが、第1回で数多くの介護や障がい福祉等の事業が採択されているため、当然にそれらの事業は問題ないものと認識したこと。

以上、今回の記事では二重受給ルール問題(介護や障がい福祉等の事業を補助事業とした申請)が多数発生した原因のひとつについて説明しました。

次回は、不正受給発生の10ステップ(上記①~⑩)のうち②以降について説明をしようと思います。

二重受給ルール該当先が多数発生した原因は?②

今回は、前回の「二重受給ルール該当先が多数発生した原因は?①」の続きのお話です。

簡単に整理しますと、前回の記事では、いくつか根拠を示して、
ほぼすべての事業者は、介護や障がい福祉等の事業を補助事業とすることが、
二重受給ルールに該当し、補助対象となることについて
・認識していなかったし、
・認識できなかったことに落ち度もない
また、当然ながら、不正を行う意図(だまして補助金を受給しようとする意思)も持っていなかったことをお話しました。

そうすると、形式上、二重受給ルールに該当する不正受給だとしても、その責任は別にあるということになります。

この特設サイトは、介護や障がい福祉等の事業を補助対象事業とすることで、二重受給ルールに該当し、形式上は不正受給となってしまうであろう事業者様に、その責任を負わせるのは問題があるということを提起するために、運営を行っています。


それでは、それを明らかにするため、不正が起こる10ステップの②以降を見ていきます。

①ルールに反する(介護や障がい福祉等の事業を補助事業とする)申請(不正の意図の有無によらず)を行うことを事業者が決定。
②事業者が支援者(認定支援機関)とともに、申請書類を作成。
③支援者(認定支援機関)が確認書を発行。
④事業者が申請を実施(計画書等の申請資料をjGrantsで事務局へ提出)。
⑤事務局から委託を受けた審査員(中小企業診断士等)複数名が計画書をチェック、採点。
⑥審査員の採点結果を元に、事務局が対象外要件への該当をチェックし、採択事業者を決定。
⑦採択事業者が交付申請手続きを実施(見積書等を事務局に提出)。
⑧交付申請書類について事務局の審査員が審査し交付決定。
⑨採択事業者が交付決定を元に投資を行い、実績報告手続きを実施。
⑩実績報告書類について、事務局の審査員が審査し、補助金額を確定、補助金を支給。


今回は②と③を見ていきます。

②事業者が支援者(認定支援機関)とともに、申請書類を作成。
③支援者(認定支援機関)が確認書を発行。

ここで事業者とは別のプレーヤーが加わりました。
そう、認定支援機関です。

事業者が不正の意図を持っていたとは全く考えていませんが、
仮にそうだったとしても、ここで第1の壁が立ちはだかります。

認定支援機関によるチェックです。

事業再構築補助金は、開始当初より、申請時に認定支援機関の確認書を必須としています。

ここで、どのような認定支援機関が、どの程度確認書を発行しているかひとつ資料を見ましょう。

第11回公募の認定支援機関別応募・採択状況の資料を見ると、民間コンサル会社が約2100件と件数は多いですが、大きなくくりでは、金融機関が約2,600件で最も多く、税理士関係が約1,600件、商工会・商工会議所が約900件などと、ばらつきがある状況です。

そして、二重受給ルール該当懸念先1162者についても、支援者として金融機関や商工会議所等が多数含まれているのが現実です。

話を戻します。

仮に、事業者が二重受給ルールに該当するような介護事業を補助事業とする事業計画を認定支援機関に相談しにきたとします。
その時に、認定支援機関が、それは二重受給ルールに該当すると認識しました(気づきました)。

なにが起こるでしょう?

当然ながら、認定支援機関は事業者に対して、「この補助事業は二重受給ルールに該当するので申請できませんよ。」と伝えるでしょう。


まさか、認定支援機関である金融機関や商工会議所が「この補助事業は二重受給ルールに該当しそうですが、うまくいけば審査員や事務局を騙して補助金が受給できるかもしれません。」などと、言うわけがありません。

いくら事業者から報酬をもらう民間コンサルティング会社でも、大抵の場合、成功報酬(例えば採択された場合、補助金の●%の報酬をもらう)で支援業務を引き受けるケースが多いと思いますので、明らかに二重受給ルールに該当するとわかれば、支援は行わないでしょう。

仮に支援したとしても、審査段階で不採択(補助対象外)となり、成功報酬の獲得が見込めないためです。
(もしくは採択されても、後々、補助金が受給できずトラブルになる可能性が高いからです)

ということで、認定支援機関が二重受給ルールを理解していれば、ほぼ二重受給ルールに該当する申請が行われず、申請がなければ採択も不正受給も起こりえません。

しかし、現実には第1回~第7回までに、医療や介護、障がい福祉や保育などの事業で採択された事業者は1162者存在すると考えています。

では、なぜこれだけの二重受給ルールに該当するであろう事業が、そもそも申請されたのか。

答えはひとつ。金融機関や商工会議所ですら、二重受給ルールで介護や障がい福祉等の事業が補助対象外となることを理解(認識)していなかった。これだけです。

ルールを認識していなかった理由は、前回書いた記事の事業者とほぼ同様の理由になります。


第1回~第7回までの公募要領に、「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」という文言がなかったことに加え、
同時期に公募されているものづくり補助金の公募要領にも、二重受給ルール(重複案件ルール)について、同様の文言での記載があったが、ものづくり補助金では、医療や介護、障がい福祉等の事業を補助対象外とするルールではありませんでした。
つまり、同じ経済産業省(中企庁)所管の補助金で、公募要領に同じ文言が記載されているのに、その意味するところが、事業再構築補助金はとものづくり補助金では、まったく違ったということが要因です。


後々説明しますが、ここでは上記のように記載していますが、私の見解としては、事業再構築補助金も、第7回までは、事務局も中企庁も関係者全員、ものづくり補助金と同様の解釈、運用をしていたと思っています。

要は、事業再構築補助金でも、第7回までは、介護や障がい福祉等の事業を補助事業としても問題ないものと認識していたということです。

それが第8回の時点で、なんらかの理由(これも後に触れますが)で事業再構築補助金のみ解釈を変更し、
「第1回」に遡及する形で、二重受給ルールに明記されてはいなかった、「公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬」が、あたかも第1回からあったかのような運用に変更されたと考えています。

この解釈が私は事実だと思っていますが、事業再構築補助金事務局、中小企業基盤整備機構、中企庁はいずれも、これを否定し、第1回から介護や障がい福祉等の事業は補助対象外である、それは事務局等は認識しており、中小企業診断士の審査員も認識のうえ審査しているとアナウンスしています。

でも・・・
もし、第1回から事業再構築補助金事務局や中小企業基盤整備機構、中企庁が、介護や障がい福祉等の事業が補助対象外だと知っていたなら、
なぜ、申請時の審査員による審査(⑤)、事務局により採択者の決定時の確認(⑥)、交付申請時の審査(⑧)、実績報告時の審査(⑩)のすべてで、これらの事業が二重受給ルールに該当していることが見逃され、不正受給者が発生することになったのか。

この謎は解けません。

⑤⑥⑧⑩の審査すべてが見逃されているケース(不正受給)があるとすれば、それが意味するところは2つ。

●事業再構築補助金事務局や中小企業基盤整備機構のチェック機能が働かなかった。
(対象外だと知っていたけど、ちゃんとチェックできていなかった)

●そもそも事業再構築補助金事務局や中小企業基盤整備機構も、介護や障がい福祉等の事業が補助対象外だと認識していなかったので、チェックされるはずがなかった
(そもそも対象外だとわかっていなかったのだから、当然ながらチェックできるはずがない)
のどちらかです。

どちらにしても、事業再構築補助金事務局や中小企業基盤整備機構がやるべきことをやっていれば、二重受給ルールにによる不正受給には辿り着かない。

これらから、介護や障がい福祉等の事業を補助対象事業とすることで、二重受給ルールに該当し、形式上は不正受給となってしまうであろう第1回~第7回採択の事業者様に、その責任を負わせるのは問題です。

長くなったので、今回は一旦ここまでとして、上記にかなり書いてしまったところはありますが、不正受給10ステップの⑤⑥⑧⑩について、次回は続きを説明していきます。

二重受給ルール該当先が多数発生した原因は?③

二重受給ルール該当先が多数発生した原因の3本目の今日は、
不正が起こる10ステップの⑤以降を見ていきます。

①ルールに反する(介護や障がい福祉等の事業を補助事業とする)申請(不正の意図の有無によらず)を行うことを事業者が決定。
②事業者が支援者(認定支援機関)とともに、申請書類を作成。
③支援者(認定支援機関)が確認書を発行。
④事業者が申請を実施(計画書等の申請資料をjGrantsで事務局へ提出)。
⑤事務局から委託を受けた審査員(中小企業診断士等)複数名が計画書をチェック、採点。
⑥審査員の採点結果を元に、事務局が対象外要件への該当をチェックし、採択事業者を決定。
⑦採択事業者が交付申請手続きを実施(見積書等を事務局に提出)。
⑧交付申請書類について事務局の審査員が審査し交付決定。
⑨採択事業者が交付決定を元に投資を行い、実績報告手続きを実施。
⑩実績報告書類について、事務局の審査員が審査し、補助金額を確定、補助金を支給。

前回の記事のおさらいも兼ねてですが、仮に事業者が不正を行おうと考えたとしても、
事業再構築補助金の受給には高い壁が立ちはだかります。

その1つ目の壁が認定支援機関でした。

ですが、その認定支援機関のチェックが働かなかった場合、事業再構築補助金を受給できるかと言うと、
そうではありません。

まだまだ壁がいくつも存在しています。
それが今回見ていくところになります。

ご紹介しましょう。

第1の壁が認定支援機関だとすれば、
第2の壁が計画書を審査する中小企業診断士等の審査員(上記⑤)になります。
そして、第3の壁が審査員が点数をつけた計画書をチェックし、最終的な採択者を決定する事務局の審査担当者(上記⑥)。
さらに、採択後の交付申請をする事務局の審査担当者(上記⑧)が第4の壁、
最後に実績報告時の審査担当(上記⑩)が最後の第5の壁となります。

確定申告書を偽造し、形式要件を整えれば受給できてしまう持続化給付金と異なり、
そもそも申請には相応の水準の事業計画書が必要であり、
申請時から考えれば、最短でも半年以上の時間をかけ、第1~第5の壁を突破する必要があるのが事業再構築補助金です。

ここまで壁があれば、ほぼ不正受給は発生しないはずです(すべてのチェック機能が働かない異常事態でない限り)。

でも、現実はそうではない(事業者が意図しない不正受給は多数存在している)と私は考えています。

そして、それが一番よくわかっているのは、すべてのデータを持っている事業再構築補助金事務局、中小企業基盤整備機構です。

事業再構築補助金事務局も中小企業基盤整備機構も気づいていない、私だけが気づいているなんてことはあり得ません。

公募要領の二重受給ルールに「公的医療保険・介護保険から診療報酬・介護報酬」という文言が明記された
2022年11月の段階で、事務局等はこの問題に気付いています。

もし、私が指摘したような事業者が意図しない不正受給がまったく存在しないのであれば、
そんな良いことはありません。私も心の中ではそう願っています。
私のルールの認識、解釈が間違っていて、介護や障がい福祉等を補助事業とした採択者が二重受給ルールに該当しないと中小企業基盤整備機構が言ってくれるのであれば、これ以上何も言うことはありません。
こんなサイトだって作る必要はまったくない。


でも、2024年3月7日に中小企業基盤整備機構イノベーション助成グループI氏と会話した際、彼は私にこう言いました。
「おっしゃられるような事業(介護や障がい福祉等の事業)については、一般的には二重受給ルールに該当する可能性が高いと思います。」

もちろん、採択者ベースの1162社すべてが補助金を受給しているわけではないですが、数多くの採択者は計画通りに事業が進んでいることが、各事業のホームページなどで確認できます。

では、一般的には二重受給ルールに該当する可能性が高い案件(事業者が意図しない不正受給)が多数あるとしたら、なぜ、事業再構築補助金事務局や中小企業基盤整備機構は、それを指摘し、公表しないのでしょうか?

事業再構築補助金事務局等が公表をためらう理由は、次のようなことだと、私は考えます。

もしこれを公表し、補助金返還を数百~千社の事業者に命令したらどうなるでしょう?

特に介護系、障がい福祉等の事業は施設の整備が入っているため、補助対象経費に占める建物費の割合も多く、補助対象経費(補助金額)も大きいと想定されます。1社あたり数千万の補助金が支給されている。

これをいきなり二重受給ルールに該当するため、加算金をつけて一括返還せよとなれば、コロナでダメージを負いながら、なんとか新規事業(補助事業)で経営を立て直そうとしている中で、大きく資金繰りを圧迫することになります。

補助金相当の部分も含め、金融機関からの借入で事業を進めていたとしても、補助金が入金になれば、その部分の借入は返済する(入金された補助金を返済に充当する)のが一般的です。(補助金相当は一時的な立替資金での対応)

ですので、いまさら、補助金を返せと言われても、補助金が現金や預金で残っているわけではなく、特に金額が数千万円となれば、手元にそんなお金はなく、事実上返済不能に陥ってしまうケースも多発すると考えられます。

であれば、もう一度、金融機関から借り入れを行えばいいと考える方も多いかもしれませんが、借入の資金使途は、形式上だった(事業者が意図しなかった)としても、不正受給で返還が必要になった補助金見合いと言うことになります。

昨今のコンプラが厳しくなる中、金融機関としても、当該資金使途に対する融資に慎重になることは当然でしょうし、仮に自己負担部分も借入で調達してい場合、補助金がなくなるのであれば、大きく融資の前提が異なってきます。

金融機関を認定支援機関にしていれば、確認書を発行した(金融機関も不正受給を見逃した)責任として、支援に応じてくれるかもしれませんが、そうでなければ、最悪のケース、追加融資の謝絶や、既存の自己負担部分の借入の条件見直しにもつながりかねません。


そうなったら、事業者の多くはこう思うはずです。

「二重受給ルールに該当するなんて知らなかったよ。」
「そんなルールどこに書いてあったんだよ?公募要領に書いてなかったじゃないか!」
「ちゃんと計画書に介護事業やるって書いてあるけど、事務局(審査員)は介護事業が補助対象外だって最初から知ってたんだろ?なんで、最初から不採択にしなかったんだよ。」
「採択後も、交付申請、実績報告など、たくさんの書類を出してるんだから、事務局は気づけたはずだろ。なんでいまさら、そんなこと言うんだよ。」

これが1社、2社なら、審査で見逃してしまうこともあるよね…となるかもしれませんが、100社単位で発生していたらどうでしょう?

それはもう、事業再構築補助金事務局がきちんと仕事をしていなかったということにならないでしょうか?

私は事業者を支援してきた立場として、最初から事業再構築補助金事務局、中小企業基盤整備機構が二重受給ルールに介護事業や障がい福祉等の事業が該当することがわかっていたうえで、各種審査段階で適切なチェック機能が働かず、上記のような事態を防げなかったのであれば、事務局と機構に大きな責任があることは避けられないと思います。

これは私の推測ですが、仮にここで私がこの問題を取り上げなかった場合、数年経って事業再構築補助金事務局が世の中から忘れられてきたころ、個社毎に事務局から二重受給ルールに該当する旨を指摘されて、補助金の返還を命じられると思っています。

その時に、各事業者が個別に事務局に対して抵抗(反論)することはほぼ不可能です。
本来は中立公平な機構も、機構自身に責任が及ぶ場合、事業者を守ることはないと、今回機構の担当者と話をした感触から感じました。大きい組織と言うものはそういうものです。

私は、この二重受給ルール問題で介護事業や障がい福祉等の事業等を補助事業として採択、補助金を受給した事業者のみが責任を負わされ、最悪のケースとして事業継続が困難となり、そこでサービスを受ける利用者にも大きな影響がでることを避けるため、早い段階で、関係する事業者に情報を共有し、もし、不利益が生じたときは、なるべくまとまって、大きな声になるようにという想いで、このサイトを立ち上げました。

以上、二重受給ルール該当先が多数発生した原因について、少しそれた部分があったかもしれませんが、書いてみました。

さて、次回ですが、私が中小企業基盤整備機構へ、二重受給ルール問題について、その責任を問う書面を2024年3月4日付で送っています。
その後、3月7日にイノベーション助成グループのI氏(ここでは仮名にしておきましょう)と話すことになるのですが、その時の会話はなかなか興味深いものでした。

その会話も録音していますが、書き起こしながら、I氏がこの問題をどのように受け止めていたのか?(私の想像ですが)、そして、そのI氏が突如3月末に異動になり、その後担当を引き継いだイノベーション助成グループのS氏がどのような対応をとったのか。少しご紹介しようと思います。次回をお楽しみに。

事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブックからバレた解釈変更①

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事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブックからバレた解釈変更②

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事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブックからバレた解釈変更 関連資料

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よろず支援先の二重受給ルール該当懸念事案

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※注意事項
本記事では、よろず支援拠点が支援した企業の実名を出して、当該企業が二重受給ルールに該当する懸念がある(事業再構築で介護事業を行っているのではないか?)という指摘をします。

しかし、繰り返し記載している通り、仮に二重受給ルールに該当したとしても、事業者様には不正の意図はなく、また責任も基本的にないというのが本サイト運営者のスタンスです。

また、補助事業のHPに「令和2年度3次補正 事業再構築補助金により作成」という記載があることや、よろず支援拠点による支援先であり、よろず本部のHPに掲載されていた事例であることを踏まえれば、事業再構築補助金を受給されていることが推測されますが、補助金を確実に受給しているという確証を得ているわけではありませんので、くれぐれも、事業者様へのご連絡や批判等はお控えください。

ここで取り上げる意味は、実際の二重受給ルールに該当する可能性が高い具体的な事例があるということをお伝えするというよりも、この事実を中小企業基盤整備機構に伝えた後の機構の対応について、みなさまに知っていただきたいと思い記事にします。

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